研究概要 |
近年開発されている多くの耐熱鋼は,焼き戻しマルテンサイト組織を有し、母相中には2種類以上の析出物(M_<23>C_6,MXなど)が分散している.これらの析出物はクリープのしきい応力を高めるとともに、高密度の転位組織の安定化に寄与している.耐熱鋼の焼戻しマルテンサイト組織は極めて熱的に安定である.しかし,応力付加状態では析出物が容易に粗大化し,粗大化した析出粒子は亜結晶粒界の移動を阻止する能力が低いので,応力負荷状態で亜結晶粒径は増大する.亜結晶粒径が増大すると亜結晶粒内の転位密度は低下して高温特性が著しく劣化する. 本研究では,Al合金7075を対象にして,高温変形中の組織の安定性を支配する諸因子の影響を定量化することを目的にして着手した.加工熱処理で導入した亜結晶組織は析出物で安定化されており,臨界応力以下では亜結晶粒径が一定であるが,臨界応力を越えると亜結晶粒径が増加し始めることが分かった.この臨界応力以下の結晶粒径は見掛け上温度に依存し,試験温度が高いほど亜結晶粒径が大きいことが分かった.この理由を明らかにするために析出物の平均粒径と平均間隔を試験温度の関数として調べた.その結果,試験温度が高くなると析出粒子が粗大化して亜結晶粒界をピン止めする力が減少してることが分かった.試験温度が上昇すると臨界応力が低下するが,これは析出物の間隔が試験温度の上昇とともに増加するためで,臨界応力の温度依存性は見掛けのものである. 亜結晶組織の安定性は析出物の大きさや間隔で定まるので析出物の粗大化を支配する因子を明らかにすることは重要である.本研究では商用マグネシウム合金のAZ80を用い,高温の塑性変形中に生じる粗大化に及ぼす歪速度,応力および歪の影響を調べ,塑性歪が粗大化過程に影響を及ぼすことを明らかにした.これらの結果,塑性変形によって自己拡散が促進されることを示したCohenらの結果と異なっており,その理由を検討した.
|