サブミクロンの超高分解能を有するシンクロトロン放射光X線コンピューティッド・トモグラフィー(以下、CT)により、き裂の実際の局所進展駆動力(き裂前縁に添う各き裂先端位置でのモードI、II、III進展駆動力)を3D、In-Situ、かつ高密度(1ミクロン以下の間隔)で測定出来る手法を開発した。これは、数百点のミクロ組織特徴点の同時追跡を行う事で実現しており、これをさらに数万点規模まで拡大することが可能である。これまでは、光弾性法、モアレ縞干渉法、コースティック法などの特殊試験技術を用いても、従来は試験片表面しか測定できなかった測定が、材料内部に適用できるようになった。一般に、き裂の局所進展駆動力は、マクロな負荷応力だけではなく、き裂偏向、損傷発生、き裂閉口現象などの各種応力遮蔽/反遮蔽効果の寄与が、現実の材料のミクロ組織構造のために複雑かつ顕著に影響する。そこで、開発した手法をアルミニウム合金中を伝播する疲労き裂に適用した。実験はSPring-8のイメージング用ビームラインであるBL20B2およびBL47XU、およびESRFのID19にて行い、その有効性を検証した。各き裂先端位置で得られた真の局所進展駆動力の発現機構を解析し、き裂の偏向、微視的な損傷、き裂閉口現象などによる各種応力遮蔽/反遮蔽効果の寄与分を、三次元的かつ定量的に明らかにすることができた。 また、結晶粒界等のナノ構造ををGa等でドーピングすることにより、CTで可視化することが可能となった。鋳造材料や展伸用材料、発泡アルミニウム合金でも結晶粒界の可視化に成功しており、技術の有用性が示されたと考える。
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