研究代表者らはこれまでに、MgFe_2O_4が交流磁場下において、他のフェライトと比べて著しく高い温度上昇を示すことを発見した。このフェライト粉末を癌の病巣部に堆積させ、交流磁場をかけて60〜70℃まで発熱・加熱壊死させることが可能となる。本研究は、材料工学的な立場から果たすことのできる研究の範囲内で、上記癌治療法に用いるフェライト微粒子の作製と、得られた粉末材料の基礎的物性・磁気的性質・加温特性・表面構造などを明らかにするものである。 平成15年度は、主に共沈法を用いて様々な粒径のフェライト粉末を作製し、その磁気的性質及び発熱特性などを検討した。まず、これまでMgFe_2O_4が他のフェライトよりも発熱する理由が明らかではなかったが、高い磁場下において、ヒステレシス損が最も大きいことが確認され、これによりフェライトの発熱が起こることがわかった。そして、微粒子化の方法として、化学的な共沈法と物理的な粉砕法について検討を行った。その結果、化学的方法で作製した場合、その粒子径による磁場中の発熱特性へ与える影響が著しく、その作製条件を選択する必要があることがわかった。この発熱特性は、フェライトの種類によってもかなり異なっており、FeFe_2O_4は粒子径が数十ナノでも発熱するが、Mgフェライトでは粒子径がきわめて小さいものについてはほとんど発熱しなかった。一方、物理的な粉砕法については、これにより50nmのものを得ることができ、この発熱特性は、数μmの試料とほとんど同じ発熱特性であった。 また、フェライト微粒子のリボソームの包埋の研究、界面活性剤による溶媒中の微粒子の分散の検討、さらには新規材料の開発も行いつつあり、平成16年度には充分な結果が得られることが期待できる。
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