研究概要 |
地球環境問題の深刻化および石油資源の枯渇化に備えたエネルギー問題などにより,化石燃料の代替エネルギーとして,メタノールを用いたシステムが有望視されている.メタノールは液体燃料であるため取り扱いが簡便で,かつ,エネルギーのリサイクル性の観点から"クリーンエネルギー"としても注目されている.しかし,メタノールは強いプロトン性の極性溶媒であるため,耐食性の高いメタノールタンク用材料が必要となる.Sn-Zn系合金めっき鋼板が有望視されているが,耐食性に及ぼす組成や組織などの材料因子,溶液中の水分や不純物の種類・濃度などの環境因子の影響についてはまだよく分かっていない.本研究の目的は,Sn-Zn系合金めっき鋼板のメタノール環境中での耐食性に影響を与える環境因子の検討すること,およびSn-Zn系合金めっき鋼板の金属組織・組成と耐食性の関係の解析することとする. H_2O, NaClおよびHCOOHを添加したメタノール中でのSn-8%Zn合金めっき鋼板の腐食機構について検討した結果,以下のことが分かった. 1.0.1-30%H_2O-メタノールもしくは0.1-30%H_2O-0.1%NaCl-メタノール中では,Sn-8%Zn合金めっき鋼板は優れた耐食性を有する.しかし,0.1-30%H_2O-0.1%HCOOH-メタノール中では,全面腐食の腐食形態を示す. 2.0.1-30%H_2O-0.1%NaCl-メタノール中でのSn-8%Znめっき鋼板の分極曲線の腐食電位はZnの腐食電位にほぼ等しく,孔食電位はSnの孔食電位にほぼ等しい電位を示す.また,Zn相の溶解により腐食が進行する. 3.0.1-30%H_2O-0.1%HCOOH-メタノール中におけるSn-8%Znめっき鋼板の分極曲線はZnに類似している.また,Zn相の溶解により腐食が進行する. 4.0.1-30%H_2O-0.1%NaCl-メタノール中での腐食後の表面皮膜は,Znの酸化物と水酸化物(少量のSnの酸化物と水酸化物)で構成されている.一方,0.1-30%H_2O-0.1%HCOOH-メタノール中での腐食後の表面皮膜は,2価および4価のSnの酸化物と水酸化物で構成されている. 5.0.1-30%H_2O-0.1%HCOOH-メタノール中におけるSn-8%Znめっき鋼板はZn相の選択溶解により表面にSn成分の酸化皮膜を形成し,本環境中で耐食性を示す.
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