研究概要 |
本研究は,原料粉末間に生じる自発的反応を利用して超微細なセラミック粒子をAlのマトリックスに分散した高強度Al基複合材料の開発を図ったものである.Al-B-TiO_2系およびAl-C-Ti(TiO_2)三元系混合粉末を出発原料として,真空雰囲気においてAlの融点以上に加熱し,素材粉末間の化学反応を利用してAlのマトリックスに超微細なAl_2O_3とTiB_2或いはTiC強化粒子を導入することについて検討を行った.特に,反応合成プロセスの最適化を目的として,原料粉末の粒子サイズや反応焼結温度の違いによる相組成や組織の変化,反応経路およびメカニズム,多孔質焼結体の緻密化および塑性加工挙動について重点的に調べた. Al-C-Ti系では,反応焼結により微細なTiC粒子を生成させると同時に,Al_3Ti相も形成した.Al_3Ti相を抑制するために,焼結温度の上昇,TiO_2の利用,さらに過量のCを添加することは効果的であることが分かった.Al-B-TiO_2系については,Al_3Ti相を完全に抑制することができる.生成されるAl_2O_3とTiB_2強化粒子のサイズは原料粉末(TiO_2)の粒度に依存する.TiO_2粉末が細かいほど強化粒子のサイズが小さくなる.また,反応焼結がより低い温度で完成できる.反応合成した多孔質体を熱間圧縮・熱間圧延によって健全な板材を成形することができる.微細なTiB_2とAl_2O_3強化相をAlのマトリックスに導入することによって,材料の機械的性質,特に弾性率や強度特性が改善されたことが確認された.本研究で提案したプロセスが簡単で,従来の粉末冶金や鋳造法と比べ,強化粒子のサイズは極めて小さく,強化粒子の体積率を上げることが容易になる.また,粉末から直接複合化,しかもサブミクロンの超微細粒子をAlのマトリックスに均一分散することができるため,今後の実用化が期待できると思われる.
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