研究概要 |
軸力-内圧型CNC2軸応力試験機を用いて,A5154-H112押出し円管の成形限界ひずみおよび成形限界応力を測定し,以下のことを明らかにした. 1.成形限界をひずみ空間で表示すると,成形限界線(FLC)はひずみ経路に依存して大きく変化するが,成形限界応力を応力空間にプロットすれば,それらは1本の曲線上(FLSC)に集中し,ひずみ経路依存性が消失することが明らかとなった. 2.FLSC上の同一の応力点に到達するまでになされた累積塑性仕事は,応力経路によらずほぼ同じであった.これにより,FLSCがひずみ経路に依存しないことは,応力-ひずみ曲線の勾配が減少することに起因する見かけ上の結果ではないことが判明した. 3.成形限界に達した瞬間において応力速度比と応力比が異なる場合でも,成形限界応力は一本のFLSC上に載り,FLSCはひずみ経路のみならず応力速度比に対してもほとんど影響を受けないことが確認された. 4.材料が弾性状態にある場合には,負荷中の応力がFLSCに到達しても破断は発生しない.すなわち,FLSCによる成形限界の判定は,材料が塑性状態にあるときにのみ有効である. 5.本供試材のFLSCがひずみ経路に依存しないのは,本供試材が等方硬化特性を有することと関連があるように思われる.一方,交差効果を示す材料においては,成形限界応力がひずみ経路に依存して変化する可能性がある.
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