本研究は水熱ホットプレスを用いて微細組織制御を行った熱電変換材料を作製し、その熱電特性の評価を行うものである。水熱合成は高温、高圧下で水の存在する条件、すなわち水熱条件下での水の作用を利用する反応であるが、水熱ホットプレスでは試料粉末を固化させるため、オートクレーブ外部から内部蒸気圧よりも高い圧力で機械的に加圧することになる。この加圧により粒子間隙に存在する水が搾り出され緻密化すると同時に、熱水の作用により粉末粒子間が結合し、機械的強度の高い成形体が得られる。本年度は、近年注目されている酸化物系熱電変換材料の1つであるNa_xCo_2O_4(x〜1)に水熱ホットプレス法を適用してみた。微細で均質な試料粉末が作製できるクエン酸錯体法によりNa_xCo_2O_4粉末を作製し、これに約15mass%の水を加えてオートクレーブに装填した。200MPaの圧力を架けながら523Kで1時間加熱することにより固化成形体を得た。これを酸素気流中1073Kで20時間焼結させたところ、相対密度99.1%の緻密な焼結体試料が得られた。この焼結体試料をSEMにより観察したところ、やや扁平な結晶粒が積み重なっているような組織が観察された。X線回折パターンより、結晶粒の配向度を示すLotgering因子を計算したところ、約0.87が得られた。この値は通常の常圧下における焼結体試料の0.74に比べてかなり大きい値であり、水熱ホットプレスにより十分結晶粒が配向した焼結体試料が得られた。
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