研究概要 |
アノード分極曲線の検討の結果,素地中あるいは電解液中にアルミニウムが存在すると5Vでの電流ピークは顕著に減少し,この電流ピークがマグネシウムに特有なものであることが明らかになった。皮膜中には素地および電解液中のA1が封入され,100V電解で生成した皮膜への混入Al量はMgの約2/3原子比に達する。素地中あるいは電解液中にA1が存在すると電流は低下し臨界電圧が高くなるが,これはA1が皮膜中に入る結果,緻密で不動態性の高い皮膜が生成し,電流を抑制するためである。しかし、塩水噴霧試験による耐食性は高電流による厚い皮膜が生成する5Vあるいは絶縁破壊電圧において電解液の種類によらず良好となる。 定電圧アノード酸化によって5V付近で生成した皮膜の構造を高分解能走査電子顕微鏡で詳細に検討した結果,アルミニウムのケラーモデルに類似の200nm程度の六角柱セル構造を持つことが初めて明らかになった。 TEMおよびGDOESによる皮膜構造の解析から,皮膜は2層あるいは3層構造であり,Anodizing ratioは純マグネシウムで1.9nm/V, AZ91Dで2.8nm/V, MgLIY合金で4.3nm/Vとアルミニウムの場合やや厚いことが明らかになった。これらの違いはそれぞれの皮膜組成による電圧保持性の違いに基づく。 MgLiY合金のアノード分極挙動は,99.95%MgとAZ91Dの中間となる。バリヤー型皮膜生成においては,アノード酸化に伴いLiは容易に電解液側に移動して溶液界面でほぼ純粋なLi酸化物として外層を形成し,また外側への移動が遅いYとMgが中間層と内層を形成する。ポーラス型皮膜が生成する場合,LiもYも電解液に溶出するため皮膜中での濃縮は見られない。超軽量合金であるMgLiYに対して初めて48時間を越える塩水噴霧試験に耐える表面処理をリン酸カリウムにより付与することに成功した。
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