研究概要 |
マイクロ・ナノスケールの構造体の配列形成には,電解・無電解めっきやエッチングなどの電気化学プロセスが必要不可欠な要素技術となっており,今後その重要性も一層増すと考えられるが,固液界面反応によるこれらのプロセスには未だ不明点が多く,そのポテンシャルが活かしきれていないのが現状である。そこで本研究では,電気化学反応系特有のパラメータである,反応場への反応種の拡散(すなわち供給)過程などに着目し,その挙動の解析および積極的制御により,極めてシンプルな系でありながら原子レベルの精密な制御を可能とする,新規な金属ナノ構造体形成プロセスを開発することを目的とした.前年度までの検討において,ホール非線形拡散制御による電解エッチングと表面酸化により,シリコンウェハの任意位置にpL容量の微小チューブアレイを形成する技術を確立したが,本年度は形成されたチューブアレイの先端に任意径のナノ開口を形成させる技術を新たに開発した.これはチューブアレイのフッ酸系溶液への浸漬により,エッチング種が非線形拡散により先端に集中し優先的に反応する性質を利用したものである.これを用いて,開口径を制御したフィルターデバイスへの展開などの可能性を検証した.また,ULSIデバイス形成を含め,今後のシリコン微細加工プロセスを考える上で重要な素材となる歪みシリコンウェハ表面について,量子化学的アプローチを用いて詳細な解析を行い,歪み状態と表面の化学反応性の相関を見出した.さらに,量子化学的計算手法を用い,無電解析出反応における還元剤などの分子種の金属クラスタ表面への吸着状態から,その反応活性を定量的に解析する方法論を確立すると共に,工業的に極めて重要な課題である,次亜リン酸のNiおよびCu表面での反応性の違いについて検討を進め,表面吸着やP-H解離エネルギーの差などがその起源となっていることを明らかにした.
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