廃棄物の発生抑制と製品の循環的利用を促進することを目指し、金属イオンを含む廃棄物の再処理とリサイクル化について研究した。まず、各種金属イオンの溶媒抽出とその遠心溶媒抽出分離法への応用に関する基礎的研究を行って、目的成分の相互分離の可能性を検討した。さらに、製品の原材料として又は新規な有価材料へ再資源化するための様々な処理条件について、実験結果を適正評価しながら、総合的なリサイクルシステムを構築し、リサイクル事業の活性化と高度化に資することを目的として研究を進めた。 錯形成試薬としてアルキルリン酸を用いて、主として遷移金属イオン及びアルカリ土類金属イオンの溶媒抽出及び遠心分配クロマトグラフィーに関する基礎的研究を行った。ビス-2-エチルヘキシルホスフィン酸を用いると、各金属イオンの分離係数は他の類縁試薬に比べて大きな値となり、遠心分配クロマトグラフィーの分離には大変有利であることがわかった。特に、有機酸をマスキング剤とすると、多様な分離モードを構築できる。ニッケル-コバルトの分離が容易なことから、将来電池産業に需要が拡大すると思われる二次電池の材料となるニッケル塩の精製に利用できると予想される。また、ジ-メチルノニルリン酸は強い錯化能を有していることから、酸性溶液からのこれら金属イオンの分離に好都合であることがわかった。たとえば、カルシウムイオンを他のアルカリ土類金属イオンから選択的に分離できること、数種類の遷移金属イオンを二段階ステップ溶離法で相互に分離できることを明らかにした。本研究では、このステップ溶離法を用いてこれまで分離が困難とされてきた希土類金属イオンの相互分離を達成した。 以上のように、遠心分配クロマトグラフィー法による金属イオン混合物の相互分離に関する基礎的研究を行って得た結果に基づいて、実験室規模での各分離処理工程での操作条件を確立した。今後は、分離回収した金属塩を再び加工製造するための技術を総合的な見地から、技術の容易さ、処理コストなどの経済性、処理した廃液の環境汚染対策、安全衛生について実証化し、沈殿法なども併用した系統的な資源リサイクルシステムを構築する予定である。
|