本課題では、磁場を利用した機能性組織形成を目指し、溶融・凝固プロセスの開発を目指している。凝固・熱処理前の初期組織に注目し、非平衡組織を利用した固液共存状態の実現、過飽和固溶体からの粗大化過程に強磁場を印加して、配向組織が形成できることを明らかにした。これらの成果をもとに、粗大化過程における配向組織形成機構の解明ならびにモデル化を行った。 粗大化により結晶が成長する過程での配向組織が形成されるモデルとして、磁気エネルギーを含めた各相の熱力学的関係と拡散による変態を考えた。つまり、界面エネルギーに起因する曲率効果と結晶方位と磁場方向で決まる磁気効果が競合した状態で粗大化が進むことになる。Bi-Mn合金系において配向組織が形成された実験結果は、磁気エネルギーを考慮した粗大化モデルに説明できた。さらに、常磁性体や反磁性体であるセラミックスにおいても焼結過程(粗大化)において配向組織が形成される機構についても説明できることを明らかにした。 また、結晶磁気異方性だけでなく、ローレンツ力を利用することにより、配向した組織が形成できることも明らかになった。例えば、偏晶系Al-In合金では、円柱状のロッドが規則的に配列した組織が磁場中一方向凝固により形成された。 さらに、静磁場中レビテーション法を用いて、過冷融液からの凝固過程における組織制御についても検討し、静磁場により柱状晶、等軸晶などの組織制御ができる可能性を示した。
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