研究概要 |
本研究では,7075アルミニウム合金を素材とし,溶湯の凝固速度を適当に制御することにより,固体粒子が細かで流動性に富む半凝固スラリーを製造して半凝固押出加工を行い,通常の熱間押出材に匹敵する引張り及び時効硬化特性を有する押出材を得るための基礎技術を開発する.平成15年度は以下の研究成果を得ている. (1)凝固速度制御による半凝固スラリー製造 溶湯温度770℃一定に保持しつつ,この溶湯を,内径10mmで長さ500mmの薄肉ステンレスパイプ上部から流し,パイプ下端における溶湯温度が使用した合金のほぼ液相線温度620℃となるようにパイプを適当に加熱,空冷して,610℃前後に保持した内径40mmの黒鉛鋳型内に導入した.その直後から鋳型を20〜50mm/minで降下させ,約100mmの位置で鋳型ごと水冷して鋳塊の組織観察を行った.その結果,均一な粒状組織とはならず,まだ個々の固体粒子形状がいびつで樹枝状組織が残存したが,明らかに粒状化傾向が見られた.従って,主にパイプの加熱,冷却条件をさらに適正化すれば,鋳塊の組織が粒状化し,細かな固体粒子と液体から成る高流動性半凝固スラリーが得られると推察された. (2)高速押出時の半溶融押出材の延性改善 優れた半溶融押出成形能を有する同合金の半凝固ビレットから,小型円筒形鋳塊(直径30mmで高さ40mm)を切り出して素材とし,押出温度560℃で,プレスラム速度10mm/s(押出材速度36cm/s)のかなり高速の半溶融押出加工を行って直径5mmに押出加工した.この際に,ダイス出口から種々の位置で圧縮空気による強制空冷を行い,空冷位置や空気量の違いが押出材の伸び・強度に及ぼす影響を調べた.その結果,空気量が80リットル/minで空冷位置がダイス出口から140mmの条件で,最も良い改善効果が得られ,従来の強制空冷無しの場合の5%以下程度の伸びが20%以上と大幅にアップした.従って,この強制空冷法を用いれば,半凝固押出加工においても,良好な引張り特性を有する高速押出材が得られる目処がついた.
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