本申請研究初年度となる平成15年度においては、申請者現有の10kW高周波電源からなる電磁浮遊炉の冷却能ならびに浮遊力の増大を目的に、下方からArまたはHeガスジェットを吹き付ける新たな装置系に対する基盤技術の確立を目指した。さらに、ターボ分子ポンプを設置し、Si表面における酸化の影響を排除した。本申請研究に用いた試料は、テーパ角60゜を有する透明石英製ホルダー内にグラファイトリングを設置し、輻射熱を利用した簡易な間接加熱法により高純度Si(φ7mm)試料を融点近傍まで加熱させ、導電性を付与し、浮遊溶融させた。なお、加熱効率の向上を目指し、高周波コイルも新規に作製した。またBを0.1%添加させることによって、Siを電磁力のみで加熱および浮遊溶融させる方法も確立でき、上記2種類の手法を用いて無容器溶融凝固実験を行った。その結果、純SiならびにSi-0.1%B試料いずれにおいても本研究で提示したガスジェットで冷却能と浮遊力を大きく改善させる新たな電磁プロセスによって無容器浮遊溶融凝固させることができ、さらに本研究の目的とするSi過冷融液からの核生成温度の検出は勿論、過冷度を20K/sから最大250K/sまでの広い温度域で種々変化させることに成功を修めた。従って、本申請研究初年度の目的とした、低過冷度域から高過冷度域におけるSiの核生成と結晶成長機構解明に対する新たな電磁浮遊溶融プロセスの実験技術は確立でき、現在広い温度域で過冷度を変化させ無容器浮遊溶融凝固させたSi試料のマクロ構造(過冷度と表面成長形態など)とミクロ構造(過冷度と結晶粒子系、成長方位、均質性など)の解析を行っている。
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