研究概要 |
平成18年度は、本申請研究課題の最終年度であり、過去4年間に渡り実施したガスジェット型電磁浮遊炉を用いた球状単結晶Si創製に対し包括的に検討した。なお、本研究で用いた浮遊溶融凝固プロセスは、地上重力場においても宇宙環境同様、無対流下での無容器凝固が実現でき、併せて300K/s程度の速い冷却を可能とし、高過冷度状態でのSi融液からの核生成を検出できる新たな手法となる。さらに、本手法はSiと高周磁場との相互作用(表皮効果)を考慮し、バルク塊状高純度Si(99.999%Si)表面に、高い導電性を有する原子状B及びCを蒸着させる独創的手法を提示し、加熱と溶融のみに電磁力を用い、浮遊と冷却全てを不活性ガスジェット流のみで可能とする、申請者独自のプロセスであり、球状単結晶Si創製を目指し、詳細に実験と解析を行った。その結果、Si表面にB及びCを微量かつ均一に蒸着させた2試料共に浮遊・溶融する新たなプロセスの妥当性が示された。また、Si過冷融液からの核生成に対する最大過冷度ΔTは、C蒸着Siで70K(冷却速度:110K/s)、B蒸着Siで104K(冷却速度:300K/s)の値が明確に計測された。さらに、C蒸着Siでは、低過冷度域(ΔT=30K)において表面はファセット成長を示すが、高過冷度域(ΔT=70K)ではデンドライト生成を示し、C蒸着時間と浮遊溶融凝固Si試料の過冷凝固過程の関係も定量的に認められた。また、凝固後試料の構造解析結果(SEM、XRD)から、過冷度の増大により、結晶粒が微細化され、併せて,優先成長方位が大きく変化する結果も明確化でき、本申請研究が最大の目的とした球状単結晶Si創製に対するガスジェット浮遊プロセスの高い有効性と定量的データ取得がなされたものと考える。
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