研究課題
本研究では、引き続き分子錯体(分子間化合物)結晶の実用化のための結晶構造制御技術に関する検討を行った。分子錯体結晶を創製するためのホスト化合物としては、水素結合性が大きくゲスト分子との相互作用が強く実用化が期待できると予想されるTetrakis(4-hydroxyphenyl)ethane誘導体を用い、ゲスト分子としては有効な殺菌剤の一つであるisothiazoline誘導体(殺菌剤)を用いた。isothiazoline誘導体(殺菌剤)は常温、常圧では液体で人体に対しては刺激性が強く、直接的な取り扱いは困難であるが、この分子錯体を用いれば、この殺菌剤を固体として取り扱うことができ、その刺激性あるいは毒性を抑制することができることが明らかとなった。この分子錯体について、多形現象の観点から、殺菌剤の徐放化過程の検討を行った結果、徐放化過程は溶媒分子をゲスト分子とする新たな分子錯体の結晶が析出する一種の転移現象が関与することが明らかになった。このような溶出のプロセスは従来報告されていなかった現象であると考えられる。また、徐放化された殺菌剤濃度や徐放化の速度は溶媒の組成のほかに温度に大きく依存すること、また、溶媒に対する分子錯体結晶の添加量も重要な因子であることなどが明らかとなった。さらに、徐放化の速度ならびに到達殺菌剤濃度は攪拌速度の影響を受け、低速度の攪拌下では真の平衡濃度に到達しないが、見かけの準平衡状態に到達することが認められた。すなわち、一種の準平衡状態が出現することを見出した。これらの結果は現在論文としてまとめつつある。
すべて 2004
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11^<th> International Workshop on Industrial Crystallization (Gyeongju, Korea)
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