本研究ではTetrakis(4-hydroxyphenyl)ethane誘導体をホストとして用い、有効な殺菌剤の一つであるisothiazoline誘導体(殺菌剤)をゲストとして包接し、この殺菌剤の徐放化特性に関して引き続き検討を行った。特にこの徐放過程への温度効果と撹拌効果にっいての検討を行った。このホストとゲストは1:2の分子比率で分子錯体を形成するが、298Kにおける徐放過程では溶媒をゲストとする新たな分子錯体の結晶が析出することが明らかになった。さらに、徐放化の速度ならびに到達殺菌剤濃度は撹拌速度の影響を受け、低速度の撹拌下では真の平衡濃度の到達せず、一種の準平衡状態が出現することを見出した。これらの結果は現在論文としてまとめつつある。また、溶媒に対する分子錯体結晶の添加量も重要な因子であることなどが明らかとなった。このような溶出のプロセスは従来報告されていなかった現象であると考えられる。また、徐放過程では温度に大きく依存することが明らかとなった。318Kでは、徐放メカニズムが298Kとは異なり、溶媒を包接した分子錯体結晶は析出しないことが分かった。
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