研究概要 |
本研究の目的は、希土類金属の相互分離および使用済み資源からの分離回収をモデルとして、マイクロ流体デバイスによる高効率の抽出分離プロセスを開発することである。 まず、チャンネル内に安定な多相流液液界面を形成、かつ各相が混和することなくそれぞれの出口より排出するチャンネルの作成に成功し、溶媒抽出の反応器として本デバイスを用いることを可能にした。希土類金属の相互分離(La,Eu,Y)あるいは、使用済み製品からの回収例としてとりあげた希土類金属(Y)と一般金属(Zn)の分離を短時間で容易に行うことができた。この装置では、簡便に抽出・逆抽出の様々な情報が得られるだけでなく、装置のサイズ効果によって、さらにはチャンネル形状によって高い抽出効率がもたらされることが明らかとなった。 溶媒抽出法を簡素化、効率化した手法として液膜法が注目されている。そこで、マイクロ流体デバイスによって流動液膜型の分離プロセスの構築を行った。金属イオンを含む供給水相、PC-88Aを含むヘプタン相、逆抽出(受容)水相を同時に流入することによって、中央のヘプタン相がPC-88Aをキャリヤーとする液膜相として機能した。抽出、逆抽出のバランスの良い条件設定により、目的の希土類金属イオンのみを受容相に回収することに成功した。 装置開発と平行して、新しい抽出剤(カリックスアレーン誘導体)および抽出溶媒(イオン性液体)の開発を行い、希土類金属の抽出、分離性能を著しく向上させることができた。 本研究では、マイクロ空間を利用して、装置そのものの性能を飛躍的に向上させるとともに、従来困難であった液膜法も実現可能にした。また、本装置に高性能の抽出系を組み込むことにより、さらに分離プロセスの高効率化が推進できることを示した。
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