Taylor法はさまざまな流体例えば超臨界流体や水溶液中における有機化合物の拡散係数の測定に広く用いられているが、極性溶質の測定においては、応答曲線のテーリングのために適切な方法とは言えない。そのため、我々は極性溶質の測定のために、高分子薄膜を内壁にコーティングしたキャピラリーカラムを用いるクロマトグラフィック・インパルス・応答(CIR)法を開発し、極性溶質の拡散係数についてある程度、精度の高い測定が可能となった。本研究目的はこの手法を用い、超臨界二酸化炭素中における極性あるいは分子量の大きな溶質の拡散係数を測定し、その値について推算・相関方法の確立を目的とする。 分子量の大きな化合物についてCIR法を適用するために、2次流れの影響の補正と、非常に信号強度の低い応答曲線に含まれるノイズ除去の2つの改良方法を開発した。2次流れの補正については、コイル状に巻かれたキャピラリー細管を用いるCIR法において、2次流れの影響が無視できない比較的高い流速域での測定値の補正として、中央モーメントから管径とコイル径の比の関数とした補正式を導いた。この補正式は誤差1%以下の精度で、2次流れの影響が無視できる流速範囲を補正なしの場合のDeSc^<1/2><8-9.5からDeSc^<1/2><18-19まで広げることができた。ノイズ除去法については、UV-Vis検出器による測定応答曲線の吸収強度が0.0001まで有効であることを示した。この2次流れの補正法とノイズ除去法を用いたCIR法により、超臨界二酸化炭素中における各種酸、エステル、グリセリド、アルコール類の拡散係数を測定した。本申請者らが提案している2つの相関式一溶媒粘度との相関式とSchmidt数による相関式一により本研究での測定値を高い精度で相関できた。
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