研究概要 |
超臨界水と超臨界二酸化炭素を用いて、排出量が多く処理困難な有機系廃棄物を、水素を主成分とするクリーン燃料とカーボネートという有用な化学品に高効率で変換する化学プロセスの研究開発を行った。 (1)超臨界水中での有機系廃棄物のガス化反応特性の解析と最適反応条件の決定 平成16年度は有機系廃棄物として、電線被覆廃材(架橋ポリエチレン)、家畜排せつ物(豚ぷん)を取り上げて、水素およびメタン生成量に対する温度、圧力、反応時間、触媒の種類などの影響を明らかにした。その結果、(1)水素生成量を増やすためには高温で低圧が適している、(2)ガス化触媒としてニッケル触媒とアルカリ触媒を試みた。その結果、シュレッダーダストや電線被覆材といったプラスチック廃棄物についてはニッケル触媒>アルカリ触媒、家畜排せつ物に関してはアルカリ触媒>ニッケル触媒、の順で水素生成活性があることが明らかになった。これは、ニッケル触媒は家畜排せつ物中の硫黄や塩素等により被毒されて触媒活性を失ったためである、(3)アルカリ触媒を用いた最適水素生成条件においてガス化を行った時、電線被覆材および乾燥家畜排せつ物1g当りの水素生成量はそれぞれ3474cm^3および1558cm^3で、全生成ガスの82%および77%を占めることが明らかになった. (2)超臨界二酸化炭素を原料とするカーボネート合成の反応特性と反応機構の解析 研究項目(1)の廃棄物の超臨界水ガス化により生成した二酸化炭素を、臭化リチウム触媒存在下で3〜7員環エーテルと反応させてカーボネートを合成し、生成物収率の比較を行った。その結果、2-エチルオキシラン、2,2-ジメチルオキシラン、1,2-ジメチルオキシランといった3員環エーテルではカーボネート収率は90%、オキセタン(4員環エーテル)では68%、オキソラン(5員環エーテル)では収率0%、オキセバン(7員環エーテル)で31%と、環のひずみの大きな3員環エーテルからのカーボネート合成が最も収率力が高いことが明らかになった。
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