研究概要 |
超臨界水中で有機系廃棄物をガス化して水素を効率よく生成し、同時に副生する二酸化炭素を超臨界状態にして、環状エーテルと反応させてカーボネートを合成するプロセスの研究開発を行った。このプロセスの工程を以下に示す。 有機系廃棄物+超臨界水→水素+メタン+二酸化炭素 超臨界二酸化炭素+環状エーテル→環状カーボネート (1)超臨界水中での有機系廃棄物のガス化反応特性の解析と最適反応条件の決定 有機系廃棄物として、プラスチックシュレッダーダストに含まれる架橋ポリエチレン、ポリウレタン、ABS樹脂、バイオマス廃棄物の家畜排せつ物、おから、ペーパースラッジを取り上げて、水素及びメタン生成量に対する温度、圧力、反応時間、触媒の種類等の影響を検討した。その結果、(1)水素生成量を増やすためには高温で低圧が適している、そして最適条件は700℃、10MPa、反応時間20分である、(2)ガス化触媒としてニッケルとアルカリを試みた結果、触媒毒を含まないプラスチック廃棄物ではアルカリ<ニッケル触媒、イオウや塩素等の触媒毒を含む家畜排せつ物等ではニッケル<アルカリ触媒の順で水素生成活性が上がること、(3)アルカリ触媒を用いた場合、架橋ポリエチレン及び家畜排せつ物1g当たりの水素生成量はそれぞれ3500cm^3、1600cm^3で、全ガス生成量の82%及び77%を占めること、(4)この水素生成量は従来のガス化法の2〜5倍に相当することが明らかになった。 (2)二酸化炭素を原料とするカーボネート合成の反応特性と反応機構の解析 研究項目(1)の廃棄物の超臨界水ガス化により生成した二酸化炭素を、臭化リチウム触媒存在下で3〜7員環エーテルと反応させてカーボネートを合成し、生成物収率を行った。その結果、(1)2-メチルオキシラン、2,2-ジメチルオキシランといった3員環エーテルではカーボネート収率は90%、4員環エーテルでは68%、5員環エーテルでは収率0%、7員環エーテルでは31%と、環のひずみの大きな3員環エーテルからのカーボネート合成が最も収率が高いこと、(2)2-メチルオキシランの場合、最適反応条件は80℃、15MPa、30分であり、プロピレンカーボネートの選択率は90%、収率は70%だったことが明らかになった。
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