DMFCの実用化において高分子電解質膜のメタノールクロスオーバーの低減とメタノールの酸化過程で生じるCOの影響を受けない新規高活性アノード電極触媒の開発は急務である。この研究では、COの影響を受けない新規アノード触媒の開発を行うことを目的としている。 そこで、平成15年度では白金微粒子及び白金-ルテニウム(Ru)微粒子の作製と調製した触媒の性能を確認した。まず、安定化剤としてポリビニルピロリドンを用いてアルコール還元法により、白金塩及びRu塩から白金及び白金-Ru担持カーボン触媒を調製した。調製した触媒は紫外可視分光法、X線回折測定、X線光電子分光法や透過電子顕微鏡により評価した。その結果、極めて均一なナノ微粒子触媒が得られていることが分かった。また、微粒子の凝集がポリビニルピロリドンによって抑制されていることが確認された。さらに、X線回折の結果から、白金粒子は面心立方格子の結晶構造をしており、白金-Ru合金微粒子は白金原子の一部がRu原子で置き換わった面心立方格子の結晶構造をしていることが明らかになった。X線光電子分光法で表面組成を検討したところ、白金-Ru微粒子はRu原子でデコレイトされた白金-Ru合金ナノ微粒子であることが明らかになった。COサイクロボルタンメトリーの結果、調製した触媒は市販の触媒に比べてメタノールの酸化及び酸素還元反応においても、より優れていることが確かめられた。 次に作製した触媒を用いて膜/電極接合体(MEA)を作製し、燃料電池の性能をV-I特性より評価したところ、作製した触媒は市販の触媒よりも優れていることが確かめられた。現在、白金-Ru-スズ三元触媒の調整を試みている。 得られた結果の一部は日本化学会の春季年会およびChemistry Lettersに発表した。 また、研究で得られた知見を含めて、図解燃料電池を執筆し、ナツメ社より出版した。
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