水産廃棄物であるカキ殻とFe(NO_3)_3との混合スラリーあるいはFe(NO_3)_3とCa(NO_3)_2との混合溶液にヤルーン炭を加え、24h攪拌して含浸担持させ、減圧乾燥後、空気流通下、500℃、2h焼成して調製した多孔質の硫化水素吸収剤(カルシウムフェライト)が高い硫化水素吸収性能(吸収率:約100%)を示した。しかし、繰り返し使用において、硫化水素吸収2回目以降では吸収率が約50%と半減した。再生後吸収剤のXRD測定を行ったところ、CaSO_4とFe_2O_3のピークが確認されたことから、CaSO_4の生成により2回目以降の硫化水素吸収にはFe_2O_3のみが寄与していたと考えられる。しかし、吸収2回目以降においても出口ガス中の硫化水素濃度はFe_2O_3のみを用いたときのような高い値(15-20ppm)を示さず、4回の硫化水素吸収-再生サイクルの間4-6ppm程度の低い値を示した。この原因を検討するために、CaSO_4にFe_2O_3を担持したFe_2O_3/CaSO_4を調製し、アルゴン雰囲気下で昇温し、出口ガスをQ-Massで測定したところ、500℃までにFe_2O_3/CaSO_4からSO_2の発生が確認された。CaSO_4のみでは昇温中にSO_2は全く発生しなかったことから、Fe_2O_3が存在することによりCaSO_4の一部が分解してCaOが再生されると考えられる。このため、硫化水素吸収-再生サイクル2回目以降ではCaSO_4が分解して生じたCaOとFe_2O_3がフェライト構造になり硫化水素吸収に作用するため、Fe_2O_3のみの場合より出口ガス中の硫化水素濃度を低い値に保つことができたと考えられる。
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