研究概要 |
熱誘起相分離法を用いたポリ乳酸多孔質分離膜を作製するため,各種有機溶媒(1,4-ジオキサン,クロロホルム,混合溶媒など)を用いて溶解性試験を行った。溶解性試験の結果より,0-90℃で製膜操作が可能と考えられた1,4-ジオキサン-水-混合溶媒を溶媒として選択した。ポリ乳酸の濃度および混合溶媒の組成(水分含有率)を変化させて,曇点を測定し,バイノーダル線を求めて種々の温度におけるポリ乳酸-1,4-ジオキサン-水-系の相図を作成した。次にポリ乳酸膜の製膜を行った。相図を参考にして,主としてポリマー濃度10%,混合溶媒中の水分比率を13%の溶液を用いた。ポリ乳酸を80℃で溶解後,ステンレス平板間にキャストし,いったん曇点よりも4℃高い温度まで恒温水槽上にて冷却した。続いて氷水冷却し,相分離と凝固を行った。生成したゲルを水で洗浄することにより,ポリ乳酸多孔質膜が作製できた。作製した膜は表面および断面を走査型電子顕微鏡にて観察した。ポリマー濃度は8-12%,溶媒中の水分の比率は12-14%の範囲で変化させて製膜実験を行った。作製した膜を用いて濾過実験を行い,膜の濾過抵抗測定と酵母懸濁液の濾過を行った。膜の濾過抵抗は市販の濾過膜と同程度であった。酵母懸濁液の濾過実験では膜面上で酵母のケークが形成され,濾液には酵母が漏出しなかった。酵母の粒径(5μm)程度の粒子を除去できる生分解性の濾過膜としての機能を有することが示された。次に濾過膜の孔径を制御するために,設備備品費で購入したホットステージを用いた相分離過程の解析に取り組んだ。こちらの実験に関しては現在観察条件の確立を行っている。
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