研究概要 |
研究代表者の田中は平成15年度にポリ乳酸-1,4-ジオキサン-水-系溶液の熱誘起相分離現象を利用して透過性のあるポリ乳酸多孔質膜の作製に成功した。平成16年度はポリマーの分子量,ポリマー濃度及び冷却方法を変化させて製膜方法を検討した。ポリマー濃度8%以上では各種条件製膜した膜は直径5μmの酵母を阻止することが可能であった。分子量を変化させると膜の濾過抵抗も変化したが,液体窒素による急冷やポリマー濃度の減少により,濾過抵抗が減少することも示された。走査型電子顕微鏡観察により,濾過抵抗の減少は膜内部のセル間の貫通孔の多い膜が形成されるためであることが示された。谷口はポリ乳酸製濾過膜を用いて,白色腐朽菌カワラタケの膜面液体培養による酸化酵素ラッカーゼの生産を行い,液体懸濁培養や液体静置培養と比較して効率良くラッカーゼが生産されることを示した。また,生産されたラッカーゼはビスフェノールAなどのフェノール性環境汚染物質の分解に利用できることを示した。田中と青木,松山はホットステージを用いたポリ乳酸-1,4-ジオキサン-水-系の相分離過程の観察結果と熱的及び速度論的相分離過程の知見から,ポリ乳酸膜製膜過程の解析を行った。海外共同研究者のD.R.ロイド教授は通常は研究代表者の田中と電子メールや資料の郵送で情報交換を行っているが,日米科学協力事業共同研究(日本学術振興会,米国国立科学財団)により平成16年5月に来日した。5月26-29日には新潟に滞在し,本研究課題に関する討論を行った。本研究課題の成果の一部は,国際的な分離膜研究の学術雑誌であるJournal of Membrane Science誌に掲載された。また,研究成果の別の一部を2005年7月にイギリスのグラスゴーにて開催される第7回世界化学工学会議の研究発表として応募したところ,口頭発表講演として受理された。
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