研究概要 |
本年度は本研究の最終年度であり,データおよび理論的解析のまとめと研究成果発表を重点的に行った。 研究代表者の田中は研究の統括と熱誘起相分離法を用いたポリ乳酸多孔質膜の作製と精密濾過膜としての特性評価を行った。田中は研究分担者の青木と松山の協力の下にポリ乳酸多孔質膜形成過程の熱力学的解析と速度論的解析を行い,製膜条件とポリ乳酸多孔質膜の精密濾過膜としての特性の関係をまとめた。多孔質構造の形成に関しては,化学工学シンポジウムシリーズ79「診断・治療システムにおける化学工学」(pp.46-51)に「熱誘起相分離法を用いた生分解性多孔質体の作製」として発表した。精密濾過膜分離膜としての研究成果は第7回世界化学工学会議(スコットランド,グラスゴー,口頭発表に選ばれた)及び国際膜会議(韓国,ソウル)にて発表した。前者の発表内容は酵母懸濁液の濾過実験データをさらに加えてJournal of Chemical Engineering of Japan誌に発表した。後者の発表では,ポリ乳酸と同じく生分解性ポリエステルでもあるポリカプロラクトンとを組み合わせた,生分解性ポリエステル-ポリマーブレンド製の高速デプスフィルターの研究が中心であるが,これについてはDesalination誌に発表した。研究分担者の谷口は昨年度成功したポリ乳酸多孔質膜を用いた白色腐朽菌の膜面液体培養について長期培養を行い,酸化酵素のラッカーゼの生産を行った。生産されたラッカーゼを用いて内分泌撹乱化学物質の一種であるビスフェノールAの酸化処理を行ったところ,市販のラッカーゼと同等の処理能力を示した。膜面液体培養の研究成果は化学工学会関東支部50周年記念大会で発表した。 本研究のまとめとしてケミカル・エンジニヤリング誌(依頼原稿)に「生分解性ポリエステル多孔質膜の作製とバイオプロセスへの応用」を発表した。
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