今年度に行った研究によって得られた知見は、以下の通りである。 1.ダイオキシン分解菌のスクリーニングと並行して、フェノール系化合物の重合沈殿処理に有効なペルオキシダーゼ生産菌の培養を行い、その最適化を図るとともに誘導物質5-アミノレブリン酸の効果を調べた。その結果、対照の場合と比較して1.8〜2倍程度の酵素活性の向上が認められた。さらに、この粗酵素液を用いてフェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノールの処理を行ったところ、フェノール、ビスフェノールAは酵素によって酸化重合され沈殿物を生じたが、ノニルフェノールは重合されず酸化分解が起った。また、ビスフェノールA、ノニルフェノールに関しては、急性毒性及び環境ホルモンすなわちエストロゲン様作用を調べたが、いずれの場合も反応後その作用の低下が認められた。 2.本研究の主題は、新規にスクリーニングした白色腐朽菌を用いてダイオキシン類のバイオレメディエーション技術を構築することにある。このような背景から、筆者らは製紙工場廃液等からダイオキシン分解菌のスクリーニングを試み、約1000株の中から高い分解性を持つ新種の白色腐朽菌325株の取得に成功した。325菌の詳細な同定は困難であったが、16rDNA-500配列解析によりPhanerochaete属と類縁関係にある株であることが判明した、この株を用いて、ポテトデキストロース液体培地中にて回転振トウ培養を行ったところ、ダイオキシンの分解が可能な酵素マンガンペルオキシダーゼ及びリグニンペルオキシダーゼの分泌が認められた。さらに、ここで得られた培養液を濃縮し、ダイオキシン類の分解を行った結果、塩素の置換数が5以上のものについても分解性を確認することができた。 3.上記菌株は、ストレスに弱く培養が困難であるため、効率よく培養できる回転円板型バイオリアクターの開発を行った。円板素材としては、織布とステンレスメッシュを組み合わせたものを使用し、現在、予備実験中ではあるが、比較的良好な結果が得られつつある。
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