研究概要 |
当該の研究期間で行われた研究成果は、以下の通りである。 1.ダイオキシン分解菌と同等の酵素ペルオキシダーゼを産生するCoprinus属の菌を培養し、その粗酵素液を用いてノニルフェノールとビスフェノールAの除去に関する実験の最適化を行った。ノニルフェノール除去に関して、ノニルフェノールと酸化剤過酸化水素との最適モル比は1:7であり、最適pHおよび反応温度はそれぞれ7-8、25-40℃であった。なお、この条件下において1mg/Lのノニルフェノールを除去するのに必要な酵素量は、0.5U/mLとなった。すなわち、1mgのノニルフェノールを除去するのに500Uのペルオキダーゼが必要であることを示している。この値は、ビスフェノールAを除去するのに必要な量の16.7倍であった。なお、ビスフェノールAとこの酵素との反応では、酸化重合による沈殿が生じたが、ノニルフェノールの場合には、沈殿は発生しないため、ビスフェノールAとは分解機構が異なることが示唆された。 2.本研究の主題は、新規にスクリーニングした白色腐朽菌を用いてダイオキシン類のバイオレメディエーション技術を構築することにある。このような背景から、筆者らは製紙工場廃液等からダイオキシン分解菌のスクリーニングを試み、約1000株の中から高い分解性を持つ新種の白色腐朽菌L-25株の取得に成功した。この菌は、16rDNA-500配列解析よりPhanerochaete属と類縁関係にある新規株であることが確認され、種々の条件下で、培養を行ったところ、著量のマンガンペルオキシダーゼを分泌することが分かった。たとえば、多量のペプトン類を添加することにより、その生産性は増加し、14U/mLもの活性を有するマンガンペルダーゼを生産することが可能となった。さらに、ダイオキシン類を基質としてこの菌を培養したところ100ng/mLの1,3,7,8-テトラクロロダイオキシンおよび1,2,7,8-テトラクロロジベンゾフランを1週間の培養で、60%以上分解させることに成功した。これは、従来から報告されている菌株より分解速度が速く、また高塩素化ダイオキシンを容易に分解させることができることから、今後の研究が期待される。
|