研究概要 |
本年度は、主にインフルエンザウィルスに対するモノクローナル抗体の作製を進めた (1)インフルエンザウィルスの表面タンパク質であるheamagglutinin(HA:ウイルスが細胞表面に結合するのに必要)分子には株間で高度に保存された領域が存在する。インブルエンザA型のH1N1およびH2N2では、TGLRNおよびGITNKVNSVIEKがその保存領域配列である。これまでの報告からこの領域は中和抗体を誘導するエピトープと予想されるので、TGLRN-GITNKVNSVIEKと両者を単純につなぎ合わせたリニアな配列、および、この配列のN末およびC末にCysを導入して環状化した配列の2種類のペプチド抗原を合成した。 (2)(1)で用意した抗原ペプチドとキャリアータンパク質(KLHやh-IgG)とのコンジュゲートを作製し、これをBalb/cマウスに免疫した。PEG法による細胞融合を実施したところ、環状化したペプチドを免疫したものは、マウスの抗体価の上昇が不十分で、目的とする抗体を得ることは出来なかった。 (3)リニアペプチドを免疫したマウスを用いたマウスでは、強くはないが10^2程度の抗体価の上昇が認められたので細胞融合を実施したところ、2種類のモノクローナル抗体HA1-1(IgG_1,kappa)およびHA1-2(IgG_1,kappa)を得た。酵素免疫測定法で各種タンパク質や合成ペプチドに対する反応性を調べると、これらの抗体は免疫に用いたペプチド抗原、およびH1N1型ウィルスとのみ特異的に反応した。 (4)現在、これらの抗体について可変領域のアミノ酸配列の決定を進めると同時に、H鎖・L鎖を調製して、抗原に対する分解活性の有無の検討を進めている。
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