研究概要 |
「スーパー抗体酵素」とは、抗体として抗原に特異的に結合するだけでなく、抗体そのものが抗原を特異的に破壊する事ができる画期的な分子を言う。病原微生物が生育するのに必須な領域(保存領域)を破壊する「スーパー抗体酵素」を作製することで、薬剤耐性を招くことなく病原微生物を死滅させることが期待出来る。本研究では流行が世界的な問題となっているインフルエンザウィルスの表面タンパクを標的とする「スーパー抗体酵素」の作製を進めた。今年度の成果を以下に示す。 1,A型インフルエンザの表面糖タンパク質であるHemagglutinin(HA)の保存領域を標的とする抗インフルエンザウィルスモノクローナル抗体HA1-1およびHA1-2のnativeなHAに対する反応性を調べた。検出手法の関係で、強いシグナルを得ることは出来なかったが、H1型とH2型のHAを持つ不活化ウィルス(Type H1N1およびH2N2)そのものとの反応性を確認した。一方、HSAやBSA等、異種のタンパクには全く反応しなかった。 2,これらの抗体産生細胞を10^8個まで培養してmRNAを抽出した。cDNAに変換後、抗体遺伝子を増幅させてプラスミドに挿入し、大腸菌でクローニングして塩基配列を決定した。 3,この配列から特定したgermline geneは両抗体ともにVk germline geneが8-21,Vh germline geneがJ558.46であった。 4,抗体遺伝子解析より推定されたアミノ酸配列を使って分子モデリングによる立体構造解析を実施した。その結果、両抗体ともに可変領域部分にはSer-His-Aspによる触媒三ツ組残基様構造は構築しなかったが、Ser-Glu-Aspによる類似の構造はH鎖,L鎖のそれぞれに存在していた。 5,上記の知見を元に、精製抗体からH鎖およびL鎖を調製して、ペプチド基質を使った酵素活性の有無を調べている。
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