研究課題/領域番号 |
15560681
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
松下 琢 崇城大学, 工学部, 助教授 (10209538)
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研究分担者 |
上岡 龍一 崇城大学, 工学部, 教授 (70099076)
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キーワード | 肝幹細胞 / 肝芽細胞 / 再生医療 / 人工肝臓 / ヒト胎児肝細胞 / 酪酸ナトリウム / PIVKA-II / 形質転換マーカー |
研究概要 |
1、ヒト胎児肝細胞からの肝芽細胞の効率的な取得プロセスの開発 肝幹細胞の一種である肝芽細胞の効率的取得について検討した結果、正常ヒト胎児肝細胞(米国でインフォームドコンセントに基づいて研究用に取得されたものを大日本製薬(株)より購入)中には約5%の割合で肝芽細胆が存在すること、この割合は継代とともに減少し第8継代目では約2%となることが示された。そこで種々の因子を用いて肝芽細胞の割合の増加を試みた結果、酪酸ナトリウム添加培地での96時間培養で、肝芽細胞のみを選択的に誘導できることが示された。この酪酸ナトリウムによるヒト肝芽細胞の誘導現象はこれまでに未報告で新規な知見である。またこの誘導現象は酪酸ナトリウム濃度依存的であり、高濃度では誘導効率は高まるものの細胞増殖が阻害された。肝芽細胞の効率的取得に最適な濃度は5〜10mMであった。本知見によって、ヒト胎児肝細胞を大量に増殖させた後に酪酸ナトリウムで処理することで、肝芽細胞のみを選択的に誘導するプロセスが構築できた。本プロセスは細胞の分離を伴わないため、操作的にもコスト的にも非常に効率的である。 2、ヒト肝幹細胞を含むヒト胎児肝細胞の効率的で安全な増殖プロセスの開発 肝幹細胞の大量増殖に伴って細胞が形質転換したら、再生医療や人工肝臓開発を安全に行うことはできない。実際に肝幹細胞と形質転換した肝がん細胞は、様々なマーカータンパク質の発現が酷似しており、両者を識別する検査方法の確立が肝幹細胞の安全な増殖プロセスの開発には軍要である。そこで本研究では、これまでに肝芽細胞で検討が行われていない肝がん細胞マーカーであるPIVKA-IIに着目し、検討を行った。その結果、肝芽細胞を含むヒト胎児肝細胞の継代培養を繰り返すと、第8継代目からPIVKA-IIが検出されるようになり、形質転換が起こる可能性が示唆された。また培地成分を変えることで、このPIVKA-II生産が抑えられることも示された。
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