研究概要 |
スクラムジェット燃焼器に関しては,1msec程度の非常に短い滞留時間において確実な着火および保炎を行う必要があり,素早い燃料と主流との混合および化学反応が求められる.このため,水素のような反応速度の大きな燃料がこれまで多く研究に用いられてきたが,水素は密度が小さいため航空機燃料として向かない.これに対して,炭化水素系燃料は密度が大きく,体積あたりの発熱量が大きいが,一方で反応速度は水素に及ばず,着火・保炎性能は水素に比べて劣ると予想される.本研究では,代表的な炭化水素燃料であるケロシンを用いて,マッハ2,主流総温1800K〜2400kの超音速高エンタルピー流れにおける燃焼特性を,燃料の投入形態および燃焼器形状を変えて実験を行った.また数値計算を行うことによって,実験結果の検証を行った.燃料投入形態として,ステップ下流から主流に直接噴射する方式,キャリアガスと衝突させて噴霧状にして噴射する方式,および予蒸発させてガス化して供給する方式の3形態を比較した.その結果,直接噴射に比べ,噴霧化あるいはガス化することにより,混合に必要な距離が短くなることが確認された.この結果,着火限界も低温側へ移行するが,その量はまだわずかであり,混合促進に加えキャビティなどによる滞留時間の増加も必要であることが分かった.また,燃焼器形状としてキャビティを採用した実験結果では,従来のステップ形状と比較して,着火限界などに大きな違いが見られなかった.数値計算で確認したところ,キャビティが機能するための最低深さが存在することが明らかになり,来年度の実験ではこの結果を踏まえてさらにキャビティ深さを深くして実験を行う.これらの結果は,16th ISABE(2003)およびAJCPP(2004)で発表された.
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