柔軟宇宙構造物の制御においては、一般にモード関数による級数展開の手法を用いて、システムの振動特性を有限個の常微分方程式で記述することにより状態空間モデルを得ている。この手法によれば振動特性の取り扱いが極めて容易になるが、その対価として局所的な振動特性に関する情報が失われてしまう。今後の宇宙インフラストラクチャの展開においてはシステムの形状がより複雑になると考えられ、このような方法は必ずしも有効ではない。このことを背景に、本研究では新しい制御論理として、ローカライズドコントロールと言う概念に着目する。この方法は、システムを有限要素に分割し、各有限要素の変位と回転を記述するローカル座標系に基づき状態空間(ローカライズド空間)を展開する。つまり、システムの数学モデルにシステムの有限要素的振動特性を記述することにより、制御論理の構築において構造の振動特性を陽に反映するものである。複雑な宇宙構造物を制御する場合には、対象を単なる数学モデルとして捕らえるのではなく、構造としての特性を考慮して制御則を構築することが望ましいが、偏微分方程式を取り扱うことの難しさから、この観点での研究は十分に行われてこなかった。本研究は、常微分方程式を用いつつも対象の有限要素的振動特性を考慮するものであり、画期的な制御系設計理論と言える。その応用例として、最適レギュレータの設計にローカライズド制御の概念を適用すると、最適フィードバックゲインを剛性マトリクスと質量マトリクスという構造パラメータのみにより構成できることを示した。なお、本研究では、ローカライズド制御理論にもとづく制御系設計コードを作成するとともに、これを実システムに適用するための方法論を示し、理論の拡張を図った。
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