研究概要 |
船舶をある状態からある状態まで最短時間で移動させる操船問題を船体の詳細な非線形運動モデルを用いて数値的に解くことにより,個人差のない操船法を得ることができる.しかし,実用上,事前にその時々の操船場面に対する最短時間制御解を得ておく必要があり,さらに,実海域の海象や求解に用いたモデル誤差をオンラインで補正する制御手法が必要である. 本研究の目的は,幾つかの操船法に対する最短時間制御解を教師データとして予めニューラルネットワークに学習させ,実海域においてその状況に応じた最短時間制御解の近似解を短時間に生成するシステムと外乱や船舶の非線形特性を考慮した制御系を構成する実用的な手法の確立である. 本年度の研究の結果,ニューラルネットワークを最短時間制御解の補間機構として用いる場合の問題点を系統的な数値計算とその評価によって明らかにするとともに,制御システム中で用いるオンライン非線形モデル予測制御系の新しい設計法を提案することができた. 具体的には,(1)種々の最短時間最短時間幅寄せ操船解を外乱の有無,モデル化誤差の有無等の条件下で幾つかの構造のニューラルネットワークに学習させ,その収束性,補間精度などを検討し,外乱を含めた条件すべてを考慮したニューラルネットワークの構成は実用上の問題が多いことを確認した. (2)(1)で行った最短時間制御解の補間導出を行うニューラルネットワークに加え,外乱を実時間制御中に補償する非線形オンラインモデル予測制御系の設計法を提案し,船体の非線形運動モデルを備えた船体運動シミュレータを対象として,数値シミュレーションを行い,その有効性を確認した. (3)提案したニューラルネットワークと非線形オンライン予測を用いた最短時間制御系の実用性を評価するために,種種の条件下での実船実験を行い,従来の手法と比較して,定性的および定量的な評価ともに提案手法が優れていることを確認した.
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