研究概要 |
1.研究目的 本研究では,凍結融解作用に対する岩石の耐久性評価の迅速化を図ることを目的とし,新たな凍結融解試験方法を開発し,その妥当性について検討した。具体的には,凍結時に岩石に拘束圧が作用しないと予想されるラップ法を考案し,まず,この方法における岩石の含水状態を明らかにした。続いて,ラップ法と標準法(ASTM)により凍結融解試験を実施し、P波速度やき裂の発生状況などから両試験方法における岩石の劣化進行速度について比較検討を行った。 2.研究成果 (1)ラップ法における岩石供試体の含水状態 溶結凝灰岩と片岩の岩石ブロックから,立方体状の供試体(一辺約50mm),円柱型供試体,不規則形状の供試体を,それぞれ3個づつ作製し,純水中に24h以上放置した。その後,供試体をそれぞれラップで覆い,気中に放置した場合の含水比の経時変化を調べた。その結果,両岩石ともに,供試体の形状によらず,1週間後の含水比の低下率は5%以内に留まり、ほぼ初期の含水状態が保たれていることが明らかとなった。凍結融解試験中に,供試体の破壊が起こると供試体の形状が変わることになるが、このような場合においても,ラップ法では供試体の含水状態を高く維持できると考えられる。 (2)ラップ法と標準法における劣化進行速度の比較 溶結凝灰岩の岩石ブロックから,立方体状の供試体(一辺約50mm)供試体と不規則形状の供試体を,それぞれ3個づつ作製し,ラップ法と標準法により凍結融解試験を実施した。その結果,両方法ともに凍結融解の繰り返しに伴い,弾性波速度はわずかづつ遅くなる傾向が認められたが,その低下割合には、試験方法による差異を見出せなかった。しかし,き裂の発生に注目すると,供試体の形状によらず,ラップ法の方が早くなった。したがって,き裂の発生段階までの岩石の劣化進行速度は,標準法よりラップ法の方が早くなると言える。
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