研究概要 |
地中熱を効率よく利用するためには、地下温度分布に影響を与える地下水流動系を把握し、これを挙動予測に反映させる必要がある。本研究は秋田平野を対象として(1)フィールド測定による地下温度分布および地下水の酒養から流出にいたる地下水流動系の解明、(2)秋田平野の広域的な地下水流動系モデルによる地下温度分布・地下水流速分布の把握、(3)秋田平野中央部に建設された地中熱利用システムの長期挙動予測、などに関する検討を行った。 フィールド測定では,消雪用深井戸、一般家庭用浅井戸、湧水、河川を対象に地下水調査を行った。浅井戸では、地下水位を測定し地下水面図を得た。深井戸では2m間隔で地下水温度測定を行って鉛直温度プロファイルを得た。水質分析に関しては、現地にてpH、電気伝導度を測定した。 地下水流動モデリングではWASY社の3次元地下水流動・熱移流シミュレーションソフトFEFLOWを使用し,秋田平野を対象とした広域的な3次元地下水流動・熱移流シミュレーションモデルを作成した。数値計算の結果、秋田平野の平均地下水流速は1.38×10^<-4>(m/d)、流向は東方より西方と推定された。温度分布と地下水位に関して、計算結果はフィールド調査の測定結果と良好な一致を示した。 続いて、地下水流動系モデリングから得られた地下水流速・流向に基づき、FEFLOWを用いて、秋田平野中央部に建設された公共施設に設置された地中熱利用空調システムの長期挙動予測を行った。その結果、同システム位置では地下水流速が小さいため、顕著な熱交換量の改善効果はみられないが、熱交換井の地下水流れに対する位置(上流側又は下流側)により長期的には熱交換量の経年低下傾向に差が見られることがわかった。また、同システムでは地下水流速が不十分なため冬季の暖房における成績係数の経年低下を防ぐためには、最低2ヶ月間の夏季の蓄熱運転が必要であることが示された。
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