地すべり等の斜面災害を防止・低減するためには広域的な地盤調査を行って危険地域を予測することが重要である。そのため地盤の物性情報として電気比抵抗が有力な候補と考えられる。比抵抗を広域にわたって効率的に求める点では空中電磁法が最も適しているが、地盤の二次元あるいは三次元構造を求めるための解析技術がないという問題があった。本研究では地形を考慮できる三次元逆解析手法を開発し、数値実験により解析精度の検証を行うと共に高知県の地すべり地域で取得されたデータに適用した、同地域の最も大きな地すべりブロック上の測線ではすでに比抵抗法二次元探査が実施され、深度約100mまでの比抵抗断面が得られ、また調査ボーリングも実施されているので、これらの結果と比較することにより空中電磁法の解析結果を評価した。その結果、空中電磁法は比抵抗法二次元探査とほぼ同程度の信頼性があることを確認した。 地上電磁法には大別すると、送受信コイル間隔が探査深度に比べて非常に小さいタイプと、そうでないタイプがある。これら2つのタイプについて逆解析法の適用性について比較した。第一のタイプでは通常の地盤比抵抗(100Ωm以上)のもとでは同相成分が離相成分に比べで一桁または二桁程度低いため、電磁ノイズの影響を大きく受け、逆解析等の定量解析は一般に不可能であり、比抵抗の極低異常域を定性的に把握するのに適していると結論できる。一方、第二のタイプでは二次元あるいは三次元逆解析法が極めて有効であることを示した。これまで第二のタイプの電磁法にはプロファイル曲線の目視による定性的解析が一般に行われてきたが、逆解析法の適用により電磁法の信頼性を大きく向上させることができることを具体的に示した。また空中電磁法と地上電磁法のジョイント解析の見通しを得た。
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