研究概要 |
地球環境保全の観点から炭酸ガスよる地球温暖化を防止する方法に関心が寄せられており,天然ガスならびに我が国の大陸棚に賦存しているメタンハイドレート(以下MHと記す)を燃料として利用すれば,炭酸ガスの排出量削減に寄与するところが少なくない。このMHの開発には,MHの分解に伴うガス湧出に対処し得る坑井掘削技術すなわち,坑井の圧力制御を可能にする掘削技術が必要であると考えられる。このためには,掘削井内におけるガスならびに繰り粉を伴う泥水の循環流動について熟知しておくことが肝要である。また,上述の掘削井内の流動は二重円管内非ニュートン流体気液固三相流動と考えられる。それゆえ,著者らは,MHの開発に資することを目的とし,垂直同心二重円管内非ニュートン流体気液固三相流動ならびに垂直偏心二重円管内非ニュートン流体気液固三相流動の解明を試みている。本研究は,同心二重円管ならびに偏心二重円管内の擬塑性流体固液二相流の基礎として、同心二重円管ならびに偏心二重円管内の擬塑性流体中を沈降する固体粒子の干渉沈降速度について実験的に検討を加えたものである。その結果、次の成果が得られた。 1)単管、同心二重円管ならびに偏心二重円管内を沈降する粒子の干渉沈降速度をニュートン流体として上水をまた擬塑性流体としてCMC水溶液(1%、0.75%、0.5%、0.25%)、を用いて測定した。その結果、偏心二重円管内の沈降する粒子の沈降速度は、沈降する位置によって異なることを実験的に明らかにし得た。 2)単管内のニュートン流体中を沈降する固体粒子の干渉沈降速度は、固体粒子の投影断面積と管路断面積との比の関数すなわち(1-(d_s/D)^2)の関数として表わされるとされている。この考えを二重円管路に適用した場合、先の関数は(1-(d_s^2/(D_o^2-D_i^2))となり、同心二重円管および偏心二重円管に関わらず同一となる。しかし、本研究におけるニュートン流体ならびに擬塑性流体による実験によれば、粒子の沈降速度は偏心二重円管内の沈降位置により異なっている。この事より、同心二重円管および偏心二重円管内を沈降する固体粒子の干渉沈降速度の推定には、上述した単管路に対する考えをそのまま適用し得ないことが分った。
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