本研究は、希薄有害イオンを含む廃水の迅速完全除去に関して、本基盤研究独自の方法により達成することを目的とするものである。 第一の方法では、希薄カドミウムイオンを含む溶液に硫化物イオンを添加して硫化カドミウムの沈殿を生成させ、微量微細な硫化カドミウム粒子を迅速に完全分離する試験研究をおこなうものである。希薄イオンからの沈殿生成では、長時間熟成しない限り微細なコロイド溶液になるが、本法により迅速完全分離が可能であることがわかった。 第二の方法は硫化物イオンを添加する代わりに、硫酸還元菌を用いて処理する方法であり、硫酸還元菌を固定化したカラムにCdイオンを含む水溶液を通過させると、カラム内で発生した硫化物イオンとCdが反応してCdSの超微粒沈殿を生成してカラムを通過する。ここで生成した希薄CdS懸濁液は、繊維状スラグを充填した固液分離カラムに導いて捕捉し、完全回収された。 第三の方法は、地熱水の様に砒素が微量含有する溶液に対して、選択的に砒素を迅速に除去する方法であり、溶液中のヒ酸に対して数当量程度の鉄あるいはアルミニウムイオンを添加して微粒の希薄沈殿を生成させ、分離するものであり、この方法により微量沈殿の迅速分離が可能であることがわかった。 第四の方法は、通常の酸性坑廃水処理などにおける希薄微粒のSSの完全除去に関する研究である。酸性坑廃水に繰り返し殿物処理法を適用した場合、シックナーにおいて低濃度のSSが除去できないという欠点があり、その克服が重要な課題となっていることに対する迅速分離法の研究である。この方法は、SSばかりでなく、希薄乳濁液に対しても可能であり、固体、液体を問わずまた粒子がナノサイズであっても迅速分離ができた。 以上の結果は他に類をみない独自の成果である。
|