研究概要 |
メカノケミカル処理したワラストナイトを炭酸化処理して得られる硬化体に多孔性付与材としてフライアッシュ,カルシウム放出源として廃セメントを添加した場合,リン除去特性がワラストナイト単独で炭酸化処理して得られる硬化体に比較して著しく向上した.これは,廃セメントからリン除去に必要なカルシウムイオンが効率的に供給されるためであると考えられる.しかし,炭酸化温度が低い場合にはリン含有溶液のpHが著しく上昇し,微細なハイドロキシアパタイトの沈殿が生成した.また,炭酸化温度が高い場合には処理温度が低い場合に比較して著しくリン除去率が低下した.これは,セメント中の水酸化カルシウムが炭酸化により炭酸カルシウムに変化するため,カルシウムの溶出量が減少するためと考えられる.したがって,セメント廃材をカルシウム放出源として用いる場合には,炭酸化処理条件を厳密に制御することが必要となる. 一方,建築用廃材として多量に放出される廃石膏をカルシウム放出源として添加した場合には,炭酸化処理の程度に依存せず,石膏が安定で,かつ,リン含有水溶液のpHの上昇も認められず安定して高いリン除去率が得られることが分かった.また,廃石膏を用いた場合には,炭酸化処理温度にかかわらず,微細な沈殿が発生せず,本研究で目的とする晶析型脱リン材としての応用が可能であることが分かった.更に,石膏を添加した場合には,ワラストナイト単独で作製した脱リン材の約25%の量で同等のリン除去能を得られることが分かった. 本研究で開発した脱リン材に対して,耐久性を評価する目的でリン酸イオン含有水溶液への繰り返し浸漬実験を行ったところ,浸漬回数が増加するにつれて,リン除去能は著しく低下した.5回の浸漬で,初期のリン除去率に対して50%以下に低下することが確認出来た。しかし,リン除去能が低下した試料を0.005mol/lの塩酸で洗浄し,表面に析出したリン酸カルシウムを除去することによりリン除去能を初期の試料の約95%までリン除去能を回復させることができることが明らかになった.
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