表面処理工場の廃水処理設備より排出されるスラッジは水分を90%近く含んでいる。この水分を除去するには焼成を行うことがまず提案されるが、スラッジにクロムが含まれている場合、焼成条件により6価クロムが生成する。本研究では、スラッジ中の3価のクロムが焼成中に6価に酸化されやすい温度、気相雰囲気、スラッジ組成等について、実際に表面処理工場より回収されたスラッジを用いて実験を行った。その結果、大気中で焼成を行った場合、焼成温度が400℃〜600℃でスラッジの結晶形態がアモルファス状態よりスピネル型に変化し、またその温度付近で6価クロム生成量が極大となることがわかった。また各種の添加剤を加え、6価クロム生成の抑制作用について調査したが、活性炭やグリセリン等の還元剤は、多少の6価クロム抑制が見られるものの十分な効果は得られなかった。また硫酸第一鉄および硫酸第二鉄はともにスラッジがアモルファス状態の温度範囲でかなりの6価クロム抑制効果が得られた。焼成温度を600℃以上に上昇させてゆくとスラッジ中の6価クロム生成量は徐々に減少した。スラッジの組成にもよるが、800℃以上で排出基準値を満足する低い6価クロム生成量となることが確認された。磁性材料を作成するために酸化第一鉄あるいは酸化第二鉄を加えた試料では、ともに800℃以上の焼成温度で軟磁性体の材料が合成され、また6価クロム生成量も排出基準値を満足するものが得られた。またスラッジと酸化第二鉄添加割合を変化させることにより、90%以上の磁性体回収率を得ることができた。
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