表面処理工場等の廃水処理設備より排出されるスラッジは水分を多量に含んでいるため、廃棄物として処理する場合に効率が悪い。そこでスラッジを焼成して減量・減容をはかることが提案されるが、焼成の条件により有害な6価クロムが生成することが知られている。15年度の研究では、実際に工場より排出されたスラッジを焼成し、実験結果として400〜600℃でスラッジの結晶形態がアモルファス状態よりスピネル型に変化し、またその温度付近で6価クロム生成量が極大となることなどを明らかにした。それらの結果を受け、16年度の研究では試薬より合成したスラッジを用い、スラッジ中のどのような成分が6価クロム生成に影響を及ぼすかを調査した。具体的には試薬の水酸化クロムに、実スラッジの主成分である水酸化ニッケル、水酸化銅、水酸化亜鉛、水酸化鉄(III)の各試薬をそれぞれ所定のモル比で混合し、それら試料を大気中200〜800℃で焼成し、脱イオン水中で6価クロムの溶出試験を行った。その結果、6価クロム生成量が極大となる温度範囲は300〜400℃となり、実スラッジの結果より低温側に移行した。また、ニッケル、銅、亜鉛、鉄の各元素について6価クロム溶出抑制の効果を比較したところ、銅がその効果が最も高く、次いで3価の鉄、亜鉛の順であった。ニッケルについては、逆に6価クロム生成を増加させる結果が得られた。実スラッジと同様の組成となるようクロム(III)、ニッケル、銅、亜鉛、鉄(III)の各水酸化物を混合した合成スラッジを焼成し、6価クロム溶出試験を行ったところ、実スラッジの場合より6価クロムが多く検出された。これらの結果より実スラッジ中の他の成分、例えば硫酸塩などが6価クロム生成を抑える効果があることが推察された。
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