研究概要 |
1.ビートパルプ高分解性糸状菌の同定 15年度の研究で土壌より分離したビートパルプ高分解性糸状菌(ビートパルプからのアラビノース生成能が高い糸状菌)は、形態観察^<1)>および依頼分析の結果、Aspergillus fumigatusである可能性が示唆された。 2.ビートパルプ加水分解における電気的前処理法 半透膜で2分された水槽の一方の槽にはビートパルプと緩衝液を、他方の槽には緩衝液を入れ、両槽の液を穏やかに撹拌しながら、各槽内に設置した白金電極を通じて直流30Vの電流を24時間通電する事によってビートパルプの電気的処理を行った。処理後、両槽間に設置された半透膜を除去することにより両槽の液を混合し、「電気処理ビートパルプ」を得た。これを、各種市販酵素剤、あるいは糸状菌培養液(粗酵素液)による加水分解に供したところ、緩衝液に24時間浸潤しておいたビートパルプを基質として用いた場合と比較して、加水分解率が最大で3倍向上した。電気的処理によるビートパルプ加水分解率の向上は、(1)ビートパルプの膨潤、(2)ビートパルプの微粒子化、(3)ビートパルプからの可溶性多糖類の溶出、等に起因することが明らかとなった。 3.固定化糸状菌の活性安定性 レーヨン製不織布(ED-5150:日本バイリーン社)を担体として気相生育法^<2)>により調製した固定化糸状菌を用いてビートパルプの繰り返し加水分解反応を行うと、固定化菌体の加水分解活性は反応を繰り返す毎に低下した。我々は、キシランの加水分解系をモデルとして、固定化菌体による水不溶性基質の加水分解においては、固定此菌体の活性安定性を高めるために反応液中に微量の栄養源を添加することが有効である^<3)>ことを既に明らかにしているので、本加水分解における固定化菌体の活性安定化条件についても同様の検討を行った。その結果、反応液に「ペプトン+酵母エキス+麦芽エキス+コーンスティープリカー」混液を添加した場合に、固定化菌体のビートパルプ加水分解活性の安定性が高まり、加水分解率90%以上の状態で反応を繰り返すことが可能であった。 引用文献:1)宇田川俊一他、「カビの分離・培養と同定」、医歯薬出版、東京、1983、p.50. 2)徳田他:醸造学会誌:86(9)、689、(1991). 3)Tokuda et al.:Biosci.Biotech.Biochem.,59(4),753(1995).
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