1.ビートパルプ高分解性糸状菌のスクリーニングと同定 全国から採取した土壌を対象としてビートパルプ高分解性糸状菌のスクリーニングを行ない、アラビノース関連糖の生成量が多い糸状菌株No.158を得た。本菌は、形態観察^<1)>および依頼分析の結果、Aspergillus fumigatusである可能性が示唆された。 2.ビートパルプ加水分解における通電前処理法 半透膜で2分された電解処理槽を用いて、ビートパルプを直流30Vで24時間処理した後、これを市販酵素剤、あるいは糸状菌培養濾液により加水分解したところ、未処理ビートパルプと比較して、加水分解率が約3倍向上した。加水分解率の向上は、通電前処理による(1)ビートパルプの膨潤とその後の微粒子化、(2)ビートパルプからの可溶性多糖類の溶出、等に起因することが明らかとなった。 3.ビートパルプ高分解性糸状菌の固定化とそのビートパルプ分解特性 レーヨン製不織布(日本バイリーン社製)を担体とした気相生育法^<2)>(培養24時間)によりNo.158菌およびAsp.niger IFO6662の固定化を行った。固定化菌によるビートパルプ分解の至適温度は40℃、分解率は約70%であった。 4.ビートパルプからの有用物質生産 4-1 通電処理によるビートパルプからの有用物質の抽出 通電処理により、ビートパルプ100gから約28gの可溶性物質を得た。その成分組成はアラビノース約30%、キシロース約9%、ペクチン約9%、ガラクツロン酸約3%、およびその他49%であった。 4-2 ビートパルプ加水分解物からの有用物質生産 Aspergillus niger IFO 6662の粗酵素によって加水分解した通電前処理ビートパルプを濃縮し、Pediococcus acidilactici 2306Lにより発酵を行なった。発酵液は、乳酸および酢酸をそれぞれ14g/lおよび9g/l含むものであり、植物病原菌であるErwiniw carotovora sub.sp.carotovoaに対する抗菌性を有していた。 引用文献:1)宇田川俊一 他、「カビの分離・培養と同定」、医歯薬出版、東京、1983、p.50. 2)徳田 他:醸造学会誌:97(10)、727(2002)
|