慣性核融合においてRayleigh-Taylor不安定性(以下、RT不安定性)の抑制は、高一様爆縮、ひいては高利得達成のために必要不可欠な最大要件の一つである。従来、積極的にRT不安定性を抑制する方策として国内外の多くの研究機関から提案されていたのはアブレーション(質量噴出)の効果を利用するものであった。これに対して本研究代表者は、アブレーションの効果ではなくもう一つのRT成長の決定因子である重力加速度を時間的にプログラムすることで、時間積分されたRT成長を最小限に抑えようというアイデアを思い立った。結果として、まず理想的な爆縮軌跡を用意し、これから逆問題としてレーザーパルス波形を決定してやればよいというシナリオに到達した。具体的な研究成果は以下の通りである。 (1)レーザー照射から最大圧縮に至る一連の爆縮過程における、トータルのRT成長量を最少にするための重力加速度の時間発展、即ち最適な爆縮軌跡を解析的に決定した。 (2)上記の最適の爆縮軌跡を実現するためのレーザーの時間波形を、刻々と変化するプラズマと入射レーザーとの相互作用から決まる吸収率をセルフコンシステントに取り扱いながら決定した。 (3)こうして求まるレーザーパルス波形と併せて、衝撃波による燃料予備加熱やエネルギー効率等を流体シミュレーションにより定量的に評価し、高利得をもたらすターゲット半径やアスペクト比等の具体的なパラメータ領域を決定した。
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