研究課題/領域番号 |
15560717
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡辺 英雄 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (90212323)
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研究分担者 |
吉田 直亮 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (00127317)
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キーワード | 材料開発 / 溶接 / イオン照射 / 電子顕微鏡 / チタン酸化物 / 溶融部 / 転位密度 / 転位ループ |
研究概要 |
バナジウム合金はその低放射性特性より、核融合炉構造材料の候補材料として注目されているが、核融合炉構造体の作製には他の大型構造物との溶接が不可欠である。しかしながら、これまで国内外で実施されてきたV合金の中性子照射実験より、照射温度が300℃近傍では延性の低下が最大の問題となることが明らかにされた。本研究ではレーザー溶接された高純度V-4Cr-4Ti合金(文科省核融合科学研究所提供、NIFS-II)に対して重イオン照射を行い、組織の電子顕微鏡観察及び機械的特性評価(押しこみ試験、引張試験等)を実施して、低放射性大型構造物の照射環境下での特性を評価する平成15年度は、高真空用の熱処理チャンバーを作成し、レーザー溶接試料の電子顕微鏡試料への加工及び比較的低照射領域(1dpa)で、銅イオンを用いたイオン照射実験を行った。その際、溶接部及び熱影響部での熱的な影響を模擬する熱処理には、不純物の混入を極力させる必要があり、これには新たに購入したターボ分子ポンプを使用し、以下の知見が得られた。 (1)イオン照射以前の試料の電子顕微鏡観察を実施した。溶融部中心から1mm程度おきにそれぞれの領域における、析出物の数密度及びサイズを測定した。また、その領域における転位密度を測定した結果、溶融部では、照射前から存在するチタン酸化物が溶接時の入熱により消失し、凝固にともなう歪により転位密度が周辺部より高いことが示された。 (2)低温(300℃)から高温(600℃)にわたり1dpa程度の照射実験を実施した結果、溶融部では、照射によって形成されるチタン酸化物の形成が特に600℃では顕著であった。これは、照射前から存在する酸化物の消失に伴う酸素濃度の増加で説明された。一方、300℃では、転位ループの形成が顕著で場所による違いが少ないことが示された。 (3)上記(1)、(2)の現象が照射以前から存在する各種の析出物及び照射環境から進入する各種不純物(酸素及び窒素等)とどう関連するかについての基礎的な指針を得た。
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