研究概要 |
バナジウム合金はその低放射性特性より、核融合炉構造材料の候補材料として注目されているが、核融合炉構造体の作製には他の大型構造物との溶接が不可欠である。しかしながら、これまで国内外で実施されてきたV合金の中性子照射実験より、照射温度が300℃近傍では延性の低下が最大の問題となることが明らかにされた。本研究ではレーザー溶接された高純度V-4Cr-4Ti合金(文部省核融合科学研究所提供、NIFS-II)に対して重イオン照射を行い、組織の電子顕微鏡観察及び機械的特性評価(押しこみ試験、引張試験等)を実施して、低放射性大型構造物の照射環境下での特性を評価することを研究の目的としている。 初年度(平成15年度)は、高真空用の熱処理チャンバーを作成し、溶接前の試料に対して熱処理を行い、転位密度及び析出物の数密度及びサイズを測定した。 次年度(平成16年度)は、重イオン照射を行い、以下のことが明らかにされた。1)非溶接剤に存在した粒状Ti(C, O, N)析出物はレーザー溶接時の入熱により溶融部では消滅し、析出物構成元素である酸素及び窒素が不純物元素としてマトリクス中に固溶した。300℃での照射で、転位ループの形成が顕著であるが場所による違いは少ない。これはこの温度にて形成される微小欠陥の大部分が格子間原子型の転位ループであることから、溶融部でマトリスク中に固溶した不純物元素がこの転位ループの核形成に有効に寄与していないことを示す。照射では、溶融部において微細なTi(C, O, N)析出物が高密度に観察されたが、非溶接材では低密度であった。これは、溶融部ではマトリクス中に固溶した酸素あるいは窒素がTi(C, O, N)析出物の核形成を促進したものと推測された。
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