名古屋大学バンデグラーフ加速器(KN-3750)に取り付けられた重水素ガスターゲットを用いてd-D反応中性子束を増加させる一方、散乱を減らすことを目的として、入射重水素ビームを絞る静電型四重極レンズを設計・製作した。また、モンテカルロシミュレーション(MCNP)を利用してガスターゲットの改良にむけて計算と概念設計を行った。 バンデグラーフ加速器を用いて4〜6MeVの中性子に対する放射化断面積を測定し、励起関数を得ることを目標としている。静電型四重極レンズは円で近似した3連の双曲電極を有し、それぞれの電極の長さは8cm、16cm、8cmとした。最初と最後の電極は同じ電位とし同じ電源を用い、真ん中の電極には別の電源を用いる。電極電圧は最高±3kVまで印可でき、隣り合う電極にはプラス、マイナスの同電圧が印可される.この四重極レンズを用いて、3MVの加速電圧の重水素ビームを収斂することができる。 従来、d^+ビームはガスターゲットに入射する前に直径5mmの孔(アパーチャー)によってビームの拡がりを押さえ、さらに3mmのアパーチャーを通してハーバーフォイルで仕切られたガスターゲットに導入していた。そのためビーム強度を損失するうえ、アパーチャー部分で発生する中性子の散乱によって照射中性子束が正しく評価できない問題があった。このレンズにより、ビームの損失なくガスターゲットに打ち込むことが出来ること、ビーム径を3mm以下に収斂させることによって散乱中性子の影響を低減させ、かつ、発生する中性子のエネルギーの拡がりを押さえることが出来る。一方、ガスターゲット容器を小さくして照射位置をターゲットに近づけ、封入ガスの圧力を上げることによって、10倍程度中性子の発生量を増加させることが可能であることがわかり、現在、ターゲットを試作中である。
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