研究概要 |
3連の静電四重極レンズおよびパルス化装置を作成し、名古屋大学KN-3750バンデグラフ加速器を用いて5〜7MeV領域の放射化断面積を散乱中性子の影響を減らしかつ生成核の半減期が1秒以下の反応まで測定できる見通しを得た。 名大バンデグラフ加速器では、重水素ガスターゲットを用いてd-D反応による単色中性子を発生させ放射化断面積を測定してきたが、ガスターゲット付近の構造物が重水素ビームを吸蔵することよって余分なd-D反応による中性子が発生し、その散乱中性子による放射化が問題となっていた。そこで、ビームをターゲット窓まで広がらないように輸送することによって散乱の影響を下げることを可能にするため静電型四重極レンズを試作した。 3連の静電四重極レンズの両端と中央にかける印加電圧比を1:1.05にすることにより、加速電圧2.0MVまでのビームを直径2mm以下に収束させることができた。また加速電圧3.75MVまでのビームも同様に収束させることが可能であるという見通しを得た。重水素ガスターゲットに付属しているスリットが直径2.5mmであることから、スリットから発生する散乱中性子を低減させることが可能であると考えられる。 一方、対象とする生成核の半減期が1秒以下の反応まで可能とするために、ビームに高電圧を高速に印可し発生中性子をパルス化するディフレクターによるパルス化装置を試作した。ビームビュワーによって完全にビームが遮断されることを確認し、さらに(p,γ)反応による即発γ線を測定することにより、ビームオフ時には、完全に即発γ線によるバックグラウンドがないことを確認した。ターゲット電流量を測定し制御回路と同期が取れていることを確認した。数十ミリ秒までの反応の測定が可能である見通しを得た。 現状の性能をもとに、モンテカルロシミュレーション(MCNP)を利用して、発生中性子を評価し実際の測定を行う予定である。
|