研究概要 |
京都大学原子炉実験所で濃縮安定同位体^<79>Br(濃縮度99.41%)の熱中性子照射により、^<80,80m>Brを製造した。これらを溶解し、滴下・乾燥により絶対測定用線源を製造し、2次元データ集積システムを用いる4πβ-γ(HPGe)同時計測装置により、同時計測及びγ線スペクトル測定を行い、崩壊率及び検出γ線強度を得た。一方、γ線放出率が高精度で決められている複数の核種溶液を用いて標準線源を作製し、同様に崩壊率とγ線強度を測定しγ線検出効率を求め、γ線検出効率曲線を得た。その結果、^<80>Br線源の崩壊率と絶対γ線強度が求められ、γ線放出率を決定することができた。 ^<79>Br(n,γ)反応では、^<80>Br(17.68m)とともに、核異性体の^<80m>Br(4.42h)が生成する。そのため過渡平衡が成立する核種で、^<80m>Brからの内部転換電子の^<80>Brの崩壊率測定への寄与に対する考慮が重要である。さらに、単体のBrは揮発性であるため比較的安定なNaBrを使用したが、生成する^<24>Na(14.965h)に対する考慮も重要である。同時計測の効率関数では内部転換電子の寄与部分を除外して外挿し、まず^<80>Brと^<24>Naの和の崩壊率を決定した。次にγ線スペクトル中の^<24>Naの1368.6keVピーク強度より^<24>Naの崩壊率を決定した。その結果、0.5〜1.0%の不確かさで^<80>Brの崩壊率を決定できた。^<80>Brの最も強い616.3keVγ線に対する測定結果は6.14(5)%で、Singh and Viggarsによる評価値の6.7(6)%は10%程度過大評価されていることが判明し、不確かさも一桁改善できた。
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