研究課題
原子炉圧力容器鋼のモデル合金Fe-0.3Cu、Fe-0.6Cuにおいては、300℃の一定温度照射に比べ、300℃/400℃の温度変動照射を行うことによる欠陥集合体回復が昨年度に実施された実験により見られた。今年度の温度変動照射では、低温側300℃で、低い照射量3x10^<-3>dpaと高い照射量9.0x10^<-3>dpaの照射を行った。また、高温側400℃での照射量は8.6x10^<-5>と3.0x10^<-4>dpaであった。照射後に、微細組織の変化を調べるために、陽電子寿命測定及び同時計数ドップラー広がり測定を行った。300℃一定温度照射に比べ、いずれの温度変動照射においてもマイクロボイドのサイズ及び密度が小さくなった。格子間原子集合体も回復した。300℃予照射の照射量が低い場合、高温での照射の初期段階にCuがマイクロボイドの表面に析出することによりマイクロボイドが小さくなった。それと共に、Cu析出物の成長しなかった。高温側の照射量がさらに高くなると、Cu析出物が成長した。300℃予照射の照射量が高い場合、それが低い場合と同様に高温での照射初期段階に、Cuの析出物の成長が見られず、Cuがマイクロボイドの表面に析出することによりマイクロボイドが小さくなった。高温側の照射量がさらに増加すると、マイクロボイドが再び形成し、成長した。この違いについては、低温側の照射により形成されたCu析出物のサイズによるものと考えられる。低温側の照射量が低い場合に形成されたCuの析出物の多くがサイズが小さいため、高温側での照射により分解し、大きい析出物が成長する。一方、低温側の照射量が高い場合に形成されたCuの析出物のサイズが大きいため、高温側で照射しても、安定である。また、温度変動照射による格子間原子集合体の回復は、300℃予照射の照射量の低い場合が300℃予照射の照射量の高い場合より顕著であった。これも予照射によって形成された格子間原子集合体のサイズから説明ができる。
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Physical Review B (in press)
Materials Transactions, JIM 46・6
ページ: 1255-1260
Journal of Nuclear Materials 343
ページ: 308-312